Spotlight on our collaborations | Dhay Alrashed
サウジアラビア出身のイラストレーターでアニメーター、インディペンデントアートスタジオ「Warshat Mokh(ワルシャット モック)」のディレクターDhay Alrashed(ダイ アルラーシド)。UNAS TOKYOのファーストコレクション「Sun's Sons」では、彼女がグラフィック制作でコラボレーションし、ブランドの持つビジョンを自身の美学を用いて表現した。
彼女がアートスタジオで企画・制作した哲学的なテーマの短編映画『Lumières』(リュミエール)は、第6回サウジアラビア映画祭の短編映画部門で最優秀賞を受賞するなど、高い評価を受けている。
姉二人と立ち上げた同スタジオのアート制作を担うだけでなく、一人の若いアーティストとして日々作品を生み出すDhayにインタビューした。
ー作品を作り始めたきっかけは何でしたか?
全てが始まったのは、7人兄弟の3番目に生まれた私が、どうしたら母親の注意を引けるかを知った瞬間でした。のちに制作することはセラピー的であることもわかりました。他のことを考える必要がなく楽しんで描いているから、ストレスや不安は私の頭の中に居場所がないのです!考える必要があるのは、私が取り組んでいる作品だけなんです。
ーDhayさんの作品には、日本のポピュラーカルチャーを思わせる要素が時折あるように感じられます。作品のインスピレーションはどこからきていますか?
私は他の多くのアラブの子どもと同じように、日本の有名なアニメを観て育ちました。そこにみられるようなキャラクターの表現方法は私の基礎となっています。大きな目と誇張された表現が好きなんです。とてもユニークで素晴らしい。これが私の作品に隠れた日本文化の要素の説明となるかもしれません。
ー日本へ来たことがあると聞いています。日本で印象的だったことは何でしたか?
日本への旅行は、これまでで一番楽しかった!初日から驚かされることばかりでしたね!
その国が突出していることは、その国の人が誇りに思い、愛していることを表しているように思います。建築やテクノロジー、日本にしかない製品など、そこにある愛が日本を特別な場所にしている気がしました。
ーUNAS TOKYOのとのコラボレーションで作ったアートワークではどんなことを表現しましたか?
UNAS TOKYOとのコラボレーションは特別なもので、彼らのビジョンを視覚的に表現しようとベストを尽くしました。彼らと話していて明らかだったのは、彼らが色を好きだということでした。そしてブランドには鮮やかな色と結びつくポジティブなフィーリングがありましたね。コラボレーション自体がとても嬉しいものでしたし、新しい機会を得られたことが何よりの喜びでした。
ー次に制作したいものは何ですか?
グラフィックノベルやコミックにすごく興味があります。これは作ることを始めてからずっと制作するのが夢だったもので、もっと研究や練習を重ね、自信を持って自分で作れるようになりたいです。私の中には伝えたいストーリーや感情が多くありますし、この夢を叶えられる日がとても楽しみです。
Dhayが2017年に姉二人と始めたアートスタジオ「Warshat Mokh」(ワルシャット モック)。アラビア語で「脳のワークショップ」を意味し、アートワークを使って、知識や存在、人間性、真実などに関する基本的な考え方を、本や映画、他の媒体で体現すること目指している。つけられた名前の通り、参加者に何かを考えさせるようなワークショップを行っているこのアートスタジオについても聞いた。
ーアートスタジオの特徴の一つにアラビア語を豊かにするということが挙げられていたのが興味深かったです。Warshat Mokhはどのようにアラブ世界を見せていますか?
アートスタジオを立ち上げた私たちは、全ての作品のオリジナル版がアラビア語で書かれ話されるものにしたいと考えました。それは私たちの母語がアラビア語であり、どんなプロジェクトもありのままで、より現実に即して作ることができるのはもちろん、この言語の美しさを世界に伝えられると思ったからです。
また、言葉にしてはいませんが、私たちの文化の変化に対しても忠実でありたいと考えています。ファッションや建築、話し言葉が確実に変わってきているので、歴史書に書かれている古い文化に固執し、それを隠すようなことするつもりはありません。今日のアラブ世界を描きたいのです。
ー短編映画『Lumières』の制作の目的は何でしたか?また着想源についても教えてください。
これは姉たちと三人でピザを食べながら何気なくアートや哲学、そして将来について話していたときに始まったものでした。姉のMalak(マラーク)がそのときの会話から着想しました。
映画は、黒い部屋で三人の女性が世界に対する見方を話している場面のみで展開されます。登場人物のSamar(サマル)とSawsan(サウサン)、Salma(サルマ)はそれぞれ実存主義、不条理主義、ニヒリズムを象徴し、三人が人生の意味や運命、自由意志について議論するんです。彼女たちはSamarが読んだことのあるギリシャ神話のオイディプス王の話のことを考えると私たち人間が救済されることはあるのか、またその話は人間の自由もしくは無益さの例なのかについても話します。
Music by Abdulrahman Baadheem
『Lumières』というプロジェクトをなぜ始めたかというと、アラビア語のコンテンツを豊かにする目的以外に、感情で人々をつなぎ、疎外感を感じていたとしても大丈夫であると思い出させるためでした。そして哲学を思想としてだけでなく、対話でも表現したかったのです。
ー短編映画のプレミアではワークショップを開催したと聞きました。どんなワークショップでしたか?
モノローグ(独白)の形式をとったもので、その背景にはこんな問いかけがありました。「私たちはとても騒々しい世の中で暮らしていて、妨げなく自分の声を聞いてもらいたいと感じています。鏡を深く覗き込んで、自分の中へ潜り込めそうな感覚になったことはありますか?」
参加者にそんな体験をしてもらいたいと考えたんです。『Lumières』の上映のあと、同映画のシーンのような部屋に椅子とカメラを設置し、映画の舞台に参加者を呼びました。映画の次は参加者の番です。Warshat Mokhはこの一部をのちにアート作品にしてYouTubeチャンネルで公開しています。
Dhay Alrashed
Behance: Dhay Alrashed
Instagram: @dhaykills
Warshat Mokh
Website: https://www.warshatmokh.com
YouTube: Warshat Mokh
Twitter: @warshatmokh
Instagram: @warshatmokh
All artworks by Dhay Alrashed